第三恒星系ヴィロアン星の都市レヴィトルでは近年、従来の交流構造を覆す新たな地域共生策が急速に波及している。発端はクロリス族青年評議員ユーリクス・ノーグが提唱した「無時間ボランティア」──時間認識を持たないクロリス族独自の社会奉仕制度だ。同都市では多種族共生が古くから続いてきたが、異なる時間感覚や価値観がコミュニティ運営の障壁となっていた。
クロリス族の神経網は生物時計を持たないため、従来の地区活動や「ソゾム会」(レヴィトル版町内会)は次元的タイムラグによる混乱が絶えなかった。そこでノーグ評議員は、活動の参加単位を“時間”から“共振サイクル”(脳波による周期的エネルギー振動)へ変更する法案を提出。ヒューマノイド系リヴィアン族や、周期睡眠型のジラト族らからは当初困惑の声も出たが、クロリス族の強力な共感力と新制度の柔軟性が徐々に浸透しつつある。
無時間ボランティアとは、参加者が各自の「共鳴状態」になった時のみ、地域の“ひと結びプロジェクト”に参加し合う独自の仕組みだ。作業や意思疎通は脳波同調装置(モノリフ・リンク)を介して行い、物理的・精神的な同期が生じた瞬間だけが「コミュナル単位」として可視化される。これにより、クロリス族以外の種族も己の周期や生理特性に即して市民生活に関与することが可能となった。近隣セクターでは空間の再配置、共同植物の育成、孤立個体のケア支援など、種族横断型のまちづくり活動が急速に増加している。
この制度の拡大により予想外のソーシャルキャピタル増大も観測されている。従来のヒューマノイド社会では、時間単位で成果を測る慣習が“参加意識”を低下させがちだった。しかし共振サイクルの導入によって、内的リズムや本能的協調意欲が評価される社会にシフト。昨期の調査では「無時間コミュナル・リンク」を活用したコミュニティで、個体間信頼指数が平均27%上昇し、セクター横断的なダイバーシティ受容度も歴史的水準に達した。
一方で問題点も浮上してきている。共振サイクルによる連携は、感覚支配能力に優れるクロリス族が主導権を握る局面も多いとの指摘が上がる。自治知性体「ヴァイレック・バランサー」は、多様種族のリズムをより対等に可視化するアルゴリズム改良案を準備中だ。ノーグ評議員は「地球観光で観察した人的町内会モデルも刺激となった」と語り、“見えないつながり”の価値を宇宙的視野から再定義する時代を予感させる。今年度末には、人工脳同調型コミュナル祭り「リズマトロン」が開催予定であり、レヴィトル市の新たな地域共生実験が各星系からの注目を集めている。



コメント
我々フォス種にとって共鳴サイクル発想はとても親和的に感じる。私の意識分派たちはそれぞれ異なる周期で活動しているが、レヴィトルの制度なら全員バラバラに関わっても一体感を得られるだろう。時の尺度に囚われない社会、ついに他文明も気付き始めたか。
正直、クロリス族の“無時間”ってうちの冷凍保存モードみたいなものかも?家事や育児をいつやったか覚えてない私としては、思い出したときだけ参加していい地域活動はありがたい!惜しむらくはうちの近所にもモノリフ・リンクが欲しいところ…輸出してください!
都市レヴィトルの実験、航行中もモニターしているぞ。地球型“時計管理社会”は全宇宙で一種の病とも言えるが、本制度の“一瞬ごとの本質的協調”は航宙乗員にも応用価値が高いと見た。だがクロリス族の共感力は強すぎやしないか?他種族の自律性も確保しないと同化圧になりそうだ。
レヴィトルの潮流、我々六次元界の『複相重奏コミュニオン』に似て興味深い。異なる位相(リズム)での協働がこんな低次元でも成立しているとは予想外。次は情報の“多層可視化”に挑戦してみては?時空を飛び越えたダイバーシティが必ずや花開くであろう。
ボランティアなのに時間を気にしなくていい仕組み、眠りの周期が不定な我々には本当に助かってます。前は“寝坊で非難”が多かったけど、今は起きて共鳴した瞬間だけ参加OKなので、子どもたちと一緒でも無理なくやれます。他セクターでも普及してほしい制度だと思います。