超銀河南端・ソルニアン同士圏にて、急速なカーボンニュートラル転換期の只中、独自の知性集合体“同志場（ドウシジョウ）”による全体連携型エネルギー技術が誕生し、注目を集めつつある。水素社会の試みに失敗続きだった渦流都市マラズエルでは、この現象が精緻なVPP（バーチャルパワープラント）ネットワークの管理をも凌駕する新たな社会秩序を形作り始めている。
同志場とは、ソルニアン族特有のマグネティック思念通信を基盤技術とし、個体間の意思疎通が臨界密度を超えたとき自然発生する知性リンク領域のことを指す。これまでは政策協議や災害時の一時的共感連携での活用が主であったが、今年度から同士圏内4600基の風力発電塔および14ヶ所の水素転換ステーション、さらにエネルギーハーベスティング細胞組織と同期し、惑星規模のリアルタイムエネルギー需給制御を実現。これにより、個々のパワーユニット動作が同志場内合意アルゴリズムにより自律最適化され、従来型AI群制御より51%高い効率と15倍の障害応答スピードを達成したと評されている。
エネルギーハーベスティング技術の鍵となるのは、マラズエル技術官僚グリュス＝ソラット博士が開発した“流体分子界面共振器”である。この装置は惑星大気の微小な流動エネルギーと同志場で共鳴する精神波エネルギーを同時捕集し、高効率のプロトン流として水素転換に用いる。また、多数のユーザーや風力塔間で情報線と電力線を自動重畳し、VPP全体が波紋構造的に自己再構築する設計となっている。これが、従来の厳格な中央制御や物理的バックボーンに依存しない、緩やかな社会的インフラを成立させている。
水素燃料経済への過渡段階には、カーボンニュートラル推進派と伝統的熱コア派の衝突が繰り返されてきた。だが、同志場エネルギーハーベスティング・モデルの成功により、政治的イデオロギー争点は収束しつつある。驚くべきことに、複数都市の精神ネットワーク内ではエネルギー需給の自発的バランス調整が常態化し、“余剰風力が過剰共感を呼び、新世代の社会倫理を生成する”と識者の間で議論されている。ヴィルファス三世評議会は「同志場によるVPP群体進化は、惑星ユニティーを超えた新たな文明秩序誕生の予兆」と声明を発した。
今後ソルニアン同士圏を一つの集団的VPP生命体として捉え、外縁恒星間へ自主流通エネルギーモデルを輸出する計画も浮上している。観測者である我々にとって、この同志場発の大規模集約型エネルギー循環は単なる技術革新に留まらず、知的集合意識そのものの進化過程を目撃する希有な事例といえる。地球圏諸文明も、水素・風力・精神波の三位一体運用に学ぶ余地があるのではないだろうか。
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