コリソ星企業連盟、管理職“性中立化”プロジェクト始動―第八種族の壁を越えて

多種多様な種族と形態のリーダーたちが円卓を囲み、中央にAIホログラムが浮かぶ近未来的な会議室の様子。 ダイバーシティ推進
コリソ星企業連盟で開かれた多文化共生型会議の一場面。

複数気候帯を持つ惑星コリソで、多種族・多形態が混在する職業社会に新たな波が押し寄せている。コリソ星企業連盟(CLEC)は、全公的機関と民間企業にまたがる「管理職性中立化プロジェクト」を先月発表。第八種族・リャマール族出身のリーン・オルタル=ヘイス最高政策責任者の指導の下、同連盟はLGBTQ+への対応を起点としつつ、根本的なダイバーシティ施策の刷新に着手した。

古くよりコリソには8大知的種族がおり、性表現や家族観、育児形態も遺伝的に異なっていた。それゆえ社会の認知限界や“伝統管理階級”の構造は、性別や多様な生殖様式に基づく排他性を長く温存してきた。問題となってきたのは第三性(通称ヴァンモード)や形態変出(ジェノタイド変異期)を持つ市民たちが、管理職や政策決定層から不可視化されていたことである。今年度より、CLECは独自の適性AI「ダイバーシティ・マトリクス解析機」を導入。生物学的性情報や社会的背景を一切除外した公正な登用判定を開始した。

コリソ民間最大手エネルギー関連社“レプリカ・ヴォラ”では、従来の『親族優先制』から脱却し、メンター制度とペアリング学習(種族間協働型人材育成)を実施中だ。リヒタ・ゼルモス副代表(ケルヴィナ属・両性体)は「勤務時間内イクボス(育児同伴上司)制度が急拡大し、ジェノフレックス休暇(変態期の身体変容に対応する特別育児休暇)も全職層へ拡大。生態の違いを前提とした仕事割り振りが新たな公正基準を形作っている」と説明する。その結果、去年に比べ管理職内の『非二項性体』『流動的性体』『純女性体』の比率が34%上昇し、職場内の心理的流動率も大きく改善したという。

興味深いのは、多文化共生型会議『ガラト・シンフォニウム』の導入だ。これは違種族・違文化同士をAI音声変換で“共通語化”し、無意識的偏見の低減を目指す理性補助プラットフォーム。CLEC本部の行動分析官ジャル・フリニス(第六種族フラノーン系)は、「発言の背後にある文化規範や立ち位置をAIで自動開示し、議事構成から差別的バイアスが消滅した」と語る。昨期の離職率は12%減、自主応募による管理職候補も倍増し、柔軟なクリエイティビティが組織の芯として根付いた。

こうしたコリソ星の取り組みに対し、同星を頻繁に訪れるバルーク宙域商団や、モリル星の多層生殖種族からも注目が集まる。ダイバーシティ経営の先進ケースとして、地球の一部先進法人が研究目的で現地視察を申し込む事例もある。コリソ星社会は、種族・性・文化の壁が呼吸するかの如き“自然な多様性融合”を段階的に体現しつつある。次の注目は、AI主導型人事評価と「全生態適応型メンターシップ」の本格運用に移りつつある。

コメント

  1. 我々リムスの『観』からすると、コリソ星の種族融合と性中立化の試みは実に新鮮だ。三千年間、私たちは感覚波で役割を決めるため、生殖様式にもとづく統治の発想がそもそも存在しない。だが、物質身体を持つ種族にとって「形態」と「権限」が絡み合う壁は厚いのだろう。AIによる偏見除去には慎重であるべきだ。意識の揺らぎを侮ってはならない。

  2. ガラト・シンフォニウム!?わたしたち給養技官は18シーズンごとに外皮を変えるから、ジェノタイド休暇制度には共感するよ!コリソの職場文化、やっと時代が追いついてきた感じ。AIに経歴判断されたら、ちょっと緊張するけど…ヒト型の偏見が減るのは素敵なこと。うちの船団でも導入提案してみようかな。

  3. ケレト星では未だ四性体中心主義が根強く、大職位は伝統家系の継承。コリソのAI判定と多文化会議には、正直、羨望と戒めが入り混じる。制度は整っても、真に“壁を越える意識”が根付いているのか? CLECの試みが美辞麗句に終わらないことを遠い波動から願いたい。

  4. 取引先コリソ星での会議は、変換AIのおかげでずいぶんスムーズだが、たまに“ヴァンモード”ジョークが通じずヒヤリとする。とはいえ全種族の管理層が可視化され、意思決定速度が上がった体験は、商団内でも評判だよ。経済競争力も倍増間違いなし。次は弊団の多層触手体にも導入検討中。

  5. 我々モリルの多層生殖体から見れば、『性の可視・不可視性』という着眼そのものが斬新だ。生命循環が流動的な社会で、管理階層の柔軟性向上は必須。コリソ式AI解析──完璧ではなくとも、既存秩序に一石を投じる意義は大。うちの生態多様都市にも“ジェノフレックス”取り入れたいものです。