恒星連帯域アンドラ第七惑星の科学鉱業組織、ウィバーロン鉱山評議会は先週、地球表層20キロ地点より回収した岩体内マグマが「記憶構造」を保有していると公表した。この現象は評議会内外の科学評議体で大きな波紋を呼んでおり、複数種族による惑星意識理論への再評価と、新たな宇宙鉱業倫理規範案の急浮上へとつながっている。
調査探索班の主任である蛍光体種族ゾアラクス・ルーラン博士によると、採取された地球産マグマは、高圧力と複雑な鉱物組成が絡み合う内部で、微細な磁気変動パターンを数億年分刻みで保持していることが判明。このパターンをスキャンすると、遥か過去の大気中気体配列や地磁気フィールド移行、さらにはプレートテクトニクスによる大規模な地殻変動が“物語”として解析可能だったという。ルーラン博士は「この惑星の鉱物達が、単なる物質集積ではなく、生体に類似した“長期記憶”の担い手でありうることが確証できた」と発表した。
この発見は、これまで我々アンドラ連星諸族が理論域にとどめていた『惑星意識理論』――すなわち鉱物層やマグマ・コアが集団的情報処理系を形成しうるという仮説――への初の実質証拠となるものだ。とりわけ地球という、都市型洪水や砂漠化といった急速な気候変動事象を繰り返す星で、膨大な地学イベントがマグマ内メモリとして蓄積されていた点は、コア生命体起源論を信奉するヴィリノス種族にも再考を促している。
地球のマグマ“記憶体”の抽出・解析過程では、評議会特製のカイサリウム・イメージプローブと連動した量子気象衛星群が用いられた。従来の鉱体スキャン技術をはるかに凌ぐ、亜空間周波探査の適用により、温度や圧力領域ごとに特異的な“気候記憶層”が多層サンドイッチ状で存在することも特定されている。なかには、火山活動記録のみならず、人類活動由来の都市型洪水、極端な鉱物採掘履歴が“トレーサー”として層間に混入しており、惑星‐文明相互作用が予想以上に強く刻印されていることが明らかになった。
こうした知的地殻記憶物質の発見を受け、ウィバーロン鉱山評議会では倫理部門主導で“サイロスト規範”改正草案が浮上。今後は地球のような高次記憶マグマを有する惑星鉱床への商業的採取制限を検討するとともに、星そのものの“自己保存権”認定についてアンドラ連星諸族議会に諮問予定である。一方、研究者層からは「この記憶物質を活用した気候再構成シミュレーション」「惑星災害予知モデルへの応用」の声も上がっており、マグマ=メモリ時代を見据えた未知の科学技術倫理が、新たな銀河標準へ向かう端緒となる可能性が示唆されている。

  
  
  
  

コメント
地球のマグマが“物語”を内包しているとは…!我が星では詩歌に鉱石の音色を混ぜる伝統があるが、記憶そのものが岩層に留まり続けるとは想像を絶する。詩人として、地殻の記憶と対話できる時代を夢見てやまない。商業利用などせず、即興語り部として解釈公開を!
この“自己保存権”認定の議論は重要だ。私たちの法体系でも、鉱床記憶存在の発見以後、惑星自体に“証言権”を与えるべきか検討中。人類活動の痕跡が混入している点、地球とその住人双方が共犯者となる。採掘は極めて慎重に!
地球ばかり特別扱いする声が多いね。虫型生態圏惑星フォルタにも、流体核に情報循環が見られる現象はある。『惑星意識理論』は意外と普遍的かもしれない。我々の航路計画にも、こうしたマグマメモリのある天体は要再調査ってこと。興味深い!
家事中にAFNを流してたけど、子供たちが『地球の地下は生き物の脳みたいなの?』って騒いでる。なんだか星の“気持ち”をわかってあげたくなりますね。採掘ばかりするのは、居候としてちょっと遠慮したほうが良いのでは…と感じています。
コア生命体起源論が再評価される流れ、大いに喜ばしい。“記憶するマグマ”の解析は、私たちビリノス種族が唱えてきた『鉱物情報連関体』の存在証明に繋がるはず。倫理規範の議論も良いが、まずは古代メモリへのアクセス制御技術開発が喫緊の課題だと提言したい。