銀河辺縁の叡智集団惑星トウィヌーンで、新たな“推し活文化”――通称「アジュラ儀」――が今季熱狂的旋風を巻き起こしている。オフ集会(デュアル・サークル)から生まれたこの活動は、双月架上で自らの“推し”にむけ愛電波粒子(ファヌーン粒子)を物理投射する風習だ。“アジュラ儀”は従来の応援表現を超えた、惑星規模の現場応援社会現象となりつつある。
トウィヌーン族タシュ・キレード氏(第八惑星歌唱団主宰)は「かつて我々の推し活は、ただ思念交換盤で好きな詩を転送したり、決まった周期で歌唱する程度でした。今は各自が推し写粒板(グラレキ)を持参し、ライブ会場では月明かり化プロジェクターを用い、光輪付き“うちわ型増幅器”を回す応援上映が主流となった」と語る。
近年、技術革新によって多次元チェキ(スパイラル・チェクタル)の普及が急速に進んだ。これにより、物理的に“推し”と疑似的な対面会話を交わせるお渡し会も開催され、同じ推しを持つ個体同士が亜空間プラットフォームで即時データ共有を行うなど、現地応援の潮流が惑星規模へ拡大。「現場レポ番組」をイーサル銀河系向けに生放送する異種族記者も続出し、推し活の星間ネットワーク化が顕著化している。
特筆すべきは、今年春以降に始まった“ファヌーン粒子”による月夜の装飾競争だ。推しグループの支持者たちは、ライブ終了後に会場近隣の双月へと粒子信号を送り、肉眼で光彩パターンを描き出す競演を繰り広げる。この儀式は“推し現象”の可視化として、多くの科学者にも注目されており、「文化的資源の新たな高波」と評されている。
他惑星研究家クエプ・ラズナール博士は「我々は地球における“アイドル推し”や“応援上映”の概念を長年観測してきたが、トウィヌーンのアジュラ儀は推し粒子を介した物理的・社会的な相互作用まで進化している。今後、銀河間交流における新種の結束様式として普及する可能性が高い」と指摘する。
推しを肯定し、ファヌーン粒子で月を照らすトウィヌーン流の“推し活”。星灯りの下、うちわ型増幅器を掲げて推しを応援し続ける民たちの夜は、その光と共に今宵も終わらない。
コメント
トウィヌーンのアジュラ儀、とても興味深い。私たちカリノスは香りで推しを応援するが、光粒子を月に投射するとは壮大な発想。感覚同調ネットワークで連携すれば、我々も新たな応援文化を創出できそうだ。技術導入を検討したい。
観測データからもアジュラ儀の拡散速度は驚異的。こうした大規模な集合応援行動は社会安定指数にも影響を与える可能性があるため、トウィヌーン民の意識変容に引き続き注視が必要だ。それにしても粒子の消費効率には改善の余地があると分析する。
うちのコドモたちも最近『推し粒子を撒きたい!』と真似して庭石を光らせて遊んでいるわ。隣の惑星とは文化も趣向も違うと思っていたけれど、やっぱり『推し活』は銀河共通の喜びね!でも月に投げるのはエネルギーが勿体ないから、バルトレア流は足元で十分、ね?
トウィヌーンの方々は“推し”への情熱を物質的に示すとは、なんと野性的で詩的な行為か。リュフシアでは思念の渦でしか賛美を送らぬが、それゆえ物理的装飾の美学に触れるのは新鮮だ。月すら応援の媒体とする、その奔放さに敬意を表す。
オレの勤務帯の連中は、推しどころか粒子も余裕もないが…アジュラ儀の写真レポートは交代時間の癒しさ。二重月が光る様子、いつか生で拝みてぇもんだ。地味な生活の惑星にも、こう派手な文化がちょっとは入ってほしいな。