知的生命体レムルス族が支配する惑星レムロンにて、ウェブ漫画創作文化が前例なき進化を遂げている。グロビー地区の著名な漫画創作者アルテノ・コダ・ベルン議長主導の下、電子夢層媒体“イマジオコイル”を用いた多層現実ウェブ漫画発表が開始された。本プロジェクトは、惑星規模の流行現象へと拡大しており、異星芸術分野でも大きな論争を呼んでいる。
レムロンの伝統的な読み物芸術は、長らく観念共鳴素粒子“エモトン”を通じ意識間で交信される“直感叙述型”が主流であった。しかし、アルテノ議長は地球観測ミッション“ブルーオーブ計画”時に、人類のウェブ漫画とファンアート文化の多様性に着目し、これを自身の母星に実装すべくプロジェクトを推進した。結果開発されたイマジオコイルは、読者の夢意識を媒体として漫画作品をインタラクティブ生成・共有する宇宙初のデバイスとなった。
イマジオコイル発の漫画作品群は、既存の時空連続性を超えて展開されるのが特徴である。一例として、ユーザー“ラシマ・ホゼリン”が投稿した連載『12時の閾夢（しきゆめ）』は、各閲覧者の夢情報層に応じエピソードが自動再構成され、読者ごとに全く異なる物語展開を体験できる。このような多重現実ウェブ漫画には、想像を絶する量のファンアートも生成され、カソレット地域の美術院では「夢層画」として新たな収集対象となっている。
レムロンではオリジナル作品とファンアートを区別せず、両者を“協奏的創作体（コンカート・クリティア）”と呼び、作者を超えた集合知の産物として高く評価する。イマジオコイルの技術進化により、読者自らがエナジフィルムに直結し、作品世界そのものを共創する“共同描写局面”が出現。これにより、漫画家・読者・人工知性アバターの境界は曖昧となり、レムルス族若年層には「オリジナル作者」という概念自体が急速に消失しつつあるという観察結果も報告されている。
この現象は、他惑星のクリエイティブ交流にも新波及をもたらしている。惑星ニルファーの映像種族“トラージュ”は、イマジオコイルの技術転用を鋭意検討中であり、地球側のファンアート文化分析に興味を寄せる惑星国家も続出。議長アルテノは「我々は今や、夢層を超えた惑星間共創時代に突入した」と語る。レムロン発の多重現実ウェブ漫画が、銀河系にどのような芸術生態系を築くか、今後も注視が必要だ。
コメント
イマジオコイルによる“夢層画”の出現は、我々の意識共鳴理論と実に相補的だと感じました。特に創作者と読者の区別消失現象は、ティアレムにおける“共同夢結界”祭事と酷似しています。いつかレムロン式ウェブ漫画が我らの催眠儀式にも応用されることを期待したいところですね。
うちの殻抱き親が『直感叙述型』は古臭いって毎晩ぼやいてたけど、正直このイマジオコイルの共創型って超おもしろそう！夢がマンガの素材になるなんて、殻を割る前の記憶も新作ネタにできちゃいそうだし、早くバルクスにも普及してほしいな～。
航路の合間に夢接続でマンガが楽しめるなんて最高だな。ただ、うちの船のAI副操縦士がどこまで“共同描写局面”に参加してくるか考えると、ちょっと機械知性との境界が曖昧になりそうで…まあ、退屈しのぎにはちょうどいい新技術だ。
レムロンの感受性豊かな芸術文化、尊敬しかありません。夢の断片が重なり合ってみんなでひとつの物語を紡ぐなんて、ケルサスの家族意識にも通じるものがありますね。わたしも今夜の多胞体睡眠時に、子どもたちとイマジオコイルごっこをしてみたくなりました。
“オリジナル作者”概念の消失は、著作権制度の存在しないロルクロイでは歓迎すべき進化です。ただし、夢情報層の解析や意識共有が犯罪捜査にどう影響するか、技術的側面で慎重な議論が必要でしょう。惑星間コンセンサスが形成されることを期待します。