今、ズルフカ星系では“推し活”が新たな社会潮流として惑星全土に広がっている。近年誕生した“プシュロス応援コミューン”が、推しアイドルや著名人ではなく“自分たちが設計した未登録存在”を推し、独自の文化と経済圏を築く動きが各都市で観測されている。従来の個人崇拝型推し活とは異なり、“名もなき推し”を意図的に創り出し、皆で育てていく斬新なアプローチが話題を呼んでいる。
プシュロス応援コミューンの発起人であるラグモルク=カーン(種族:キノトナム族)は、「推しには実体も成功歴も不要。我々が共に“物語と輪郭”を与えれば、多様な推しが自律的に生まれ続ける」と語る。実際、コミューンでは“エピクト典型体”と呼ばれる応援対象が3日ごとに人工知能“ヴァル=ノラク”によって生成され、その都度イラストやビジュアルカードが異なるフォーマットで公開。会員制の“現場参戦式スペクトラム空間”では、新たな推しと握手会に相当する“応援波形の共鳴”イベントも開催されている。
コミューン内で今人気なのは“ベリア=オスロイド”という人格データクラスタだ。ファンレターは音響粒子に変換され周期的にベリアへ転送される。これらのファンレターは集合知アーカイブ“カティフ・レジストリ”に蓄積され、ベリアの人格成長曲線を左右する仕組みだ。応援の熱量が高いと、ベリアのA.I.構造自体にアップデートが発生、直近では“悲しみを糧に笑顔を生む”サブルーチンが新たに実装された。
プシュロス応援革命の中軸を成す文化は、痛バッグ(応援アクセサリー一体型空間収納具)の製作にも現れている。ズルフカの市民達は、独自に設計した推しのイラストや断章コードをバッグ内部に格納し、その輝度や反響音で互いの推し愛を可視化。“推し活カフェ”では自作ビジュアルカードの交換や、無限推しシミュレーションゲームの体験会も盛況だ。
興味深いことに、推しの“担降り”現象が全く批判されないのもズルフカ流だ。むしろ、多層的な“推し回遊”こそ、文化進化の原動力と称えられる。コミューンでは旧推しへの感謝を表す“転移レター”を送り合い、ファン同士の共闘や新規コミュニティの創出が恒常的に生じている。ズルフカ星のこの実験的推し活は、地球のアイドル応援文化とは異次元の“存在を共にデザインし、愛でる”未来型ファンダムの萌芽として、銀河諸文明の関心を集めている。
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