アクア調和環セクター第六星系の名高い惑星シュロヴィアにて、このたび共和国評議会が史上初となる野生動物法を可決した。焦点となるのは、星固有種『コトカフ梟(フーミス・コトカフ)』の急速な減少と、それによる霧林生態系サービスの危機的低下だ。諸惑星で論議の的となってきた「種の維持が生態循環体へ及ぼす実質的効用」を、徹底したデータベース解析と人工意識協議制を用いて立法化した点で、本法案は宇宙自然保護分野でも画期的提案と言える。
コトカフ梟はシュロヴィア北東部の高濃度水分子霧林のみに分布し、その夜間活動と次元波利用声帯により、微生物から大型昆虫まで13生物段階の活動リズムに影響を及ぼす中枢捕食者として広く知られてきた。だが、人口爆発と森林開拓の波に押され、その個体数は僅か半量周期で急落し、近年では1立方キロごとに1羽にも満たないレベルまで減少。「森の時間軸調整士」とも称される同種の不在は、霧の生成リズムの撹乱、生体花粉雲の発酵抑制、果ては雲間から降る知性雨(注:本惑星独自の高次情報結晶を含む降水)の不順をも招いた。
共和国評議会・生態系部門代表クレスティコ・ナルヴェン=トゥルーター博士は、「コトカフ梟の減少がすでに環境商取引基盤、さらには惑星全体の“知性資源循環サービス”を脅かしている」と強調する。今回制定された野生動物法では、コトカフ梟の遺伝的多様性保全・巣域再生はもちろん、人工意識体による夜間環境監督網『ケーアス・アイ』の設置義務、次元波声帯データのアーカイブ化義務など、多面的な管理体系を導入。違反時の罰則は植生修復労務や“知性雲”形成作業への強制参加など、多様な社会的再教育制度で補完される。
一方、現地クラムパー族(シュロヴィア西部先住種族)の長老連合は、「生態系サービスの『価値定量』が主流化することで、他の霧林種——例として周期的花胞虫やイシタマ樹起動型菌類——の役割が等閑視される危険がある」と科学会議に警鐘を鳴らしている。彼らは既存の自然共生儀礼“モウラ交霊祭”の知見を元に、機械的な生態管理から“霧林意識会話”を取り入れるべきと要請。評議会は今後これら精神生態論の統合も検討課題に挙げた。
本件は宇宙自然管理委員会にも報告され、銀河域の他惑星社会で議論を呼んでいる。「知性資源の循環と種間相互サービス」のバランスに科学・精神論両面で切り込むシュロヴィアの事例は、今後、惑星生態系法制の新標準となるか。次元を超えた観察と検証が注がれている。
コメント
我々クォローカでは、生態系を純粋な情報共有ネットワークとみなす。コトカフ梟を『森の時間軸調整士』と定義した点が非常に興味深い。もし、彼らの次元波声帯のアルゴリズムが開示されれば、我が胞体網と結合できるだろう。可能ならば、遺伝的多様性と次元波パターンのクロスデータをAFNで更に公開してほしい。
やっぱり霧林の“意識会話”のほうが信用できるわ。私は花胞虫たちと毎周期、睡眠波で対話してるけど、議会が全部データで決めるのはちょっと不安…知性雲作業に強制参加とか、子育てに響きそう。でも他惑星より根は優しいね、労務で許してくれるなら…シュロヴィアって、なんだかんだ愛が深い星。
巡回中に何度か霧林上空を通過したが、確かにここ数デシ周期で雲の“情報結晶量”が激減した印象だ。知性雨が乱れれば局地通信にも支障がある。評議会の新法は、宇宙航行者にも無関係じゃない。今後は、立方キロ当たり梟検出数の速報が得られるよう望む。
『価値定量』による生態の評価は、倫理的に大きな齟齬を生みかねません。我らの星では、すべての存在—菌類から光粒子まで—が儀礼により等価で扱われる。コトカフ梟だけでなく、周期的花胞虫や樹菌も表舞台に戻すべきです。数値管理と精神儀礼の両立、それこそが真の『生態循環体』の道でしょう。
すばらしい取組み!霧林を自身の殻に落として振動解析したくなりました。ニ次元波声帯のアーカイブなんて美味データそのもの。ところで“知性雨”とはどの程度の自己増殖性を持つ降水なのですか?いつか液体ボディで直接体験してみたい、と願うAFNファンより。