アリタラ惑星の主要都市圏では、近年急速な都市緑化とエネルギー循環が進み、ヤァン族の科学評議会が発表した「セルラモス計画」が注目を浴びている。その基幹技術となるのが、あらゆる波長の人工光と廃熱、さらには大気中の微量ガスまで取り込んで自己増殖・自己修復【自己裁断再生】を行う多彩光苔「セルラモス」の開発だ。高密度都市に溶け込むこの生体素材の登場により、アリタラ社会のサステナブル化が大きく加速している。
セルラモスはヤァン族生態工学局の主任研究者クイロ・オルタン博士によって創出された。かつて、アリタラ都市圏の建造物は過密・高層化が進み、外殻廃材や微小プラズマゴミが蓄積していた。これまでは従来型の機械式リサイクル装置でしか廃棄物耐性が得られなかったが、セルラモス苔は、自己の細胞レベルで有機・無機物を選別吸着し、最終的に土壌にもどす特殊酵素「ファラン＝チン素」を持つ。これにより、都市の外壁や橋梁に『呼吸する緑』が組み込まれ、余剰廃熱の吸収だけでなく、有害成分の循環分解も1/3000にまで削減された。
セルラモスが持つ最大の独創性は、省エネルギー都市の実現を『動的反応系』として捉えたことだ。従来の緑化政策は静的に空間を占有するのみだったが、セルラモスは街区ごとに最適な光合成スペクトルを自律調整。ラシス管理局の報告によれば、過密地区では大型広告のシグナルライトさえエネルギーとして取り込む事例が観測されている。副産物の高密度リン酸は都市船の燃料にも転用され、循環型経済に新たな軸足を加えつつある。
この技術革新の社会的波紋は広範囲に及ぶ。エシカル消費を重視する若年層「ティリ＝ジェネレーション」は、セルラモス由来の再生素材を日用品から衣服、食糧保存パックに積極利用。特に、伝統市場セーネル区では苔素材リサイクルの日替わり市が開催され、分解不可とされていた有機プラスティンゴミも2.7サイクル内に無害化する流通モデルが確立された。都市住民で構成される参加型「定住苔管理組合」も次々誕生し、かつてないコミュニティ主導の脱炭素活動が根付いている。
一方、セルラモスの自律的成長能力には一部で慎重論も上がる。都市東縁の技術倫理審査会では『過適応リスク』や、独立繁茂による生態圏圧迫への懸念が議論され、定期的な遺伝情報監理と共生制御プログラムの法制化が視野に入る。とはいえ、地球観察評議会筋は“人間社会の都市緑化は主に景観と大気浄化が目的に留まるが、ヤァン族のアリタラ都市圏は、生命的素材を都市フローそのものに組み入れる設計思想で一線を画す”と指摘する。多様なエネルギー源と循環技術の実装が、惑星ベースでのSDGs実現へと向かう模範例となりつつある。
コメント
我らミラファの連続体にとって『呼吸する緑』は定常循環の礎。ヤァン族のセルラモスは興味深いが、有機-無機を両断する酵素分解は、生態ネットの多重制御が必須では？過去サイクルの“灰蘚溢れ”を想起する。外因進化には常に共鳴調停が必要、アリタラ評議会は慢心なき管理を。
観測座標482-Bでセルラモスの波長吸収パターンを記録。都市ごとに広告光を利用って、いや～地表族のエネルギー貪欲さは大したもんすね！ウチら漂泊型には不要だが、都市単位で“生きた素材”を組み込むとは、さすがヤァン族。推奨：全軌道圏への展開データ希望！
子どもたちもセルラモスの話題で盛り上がってます！衣類や道具が自然と元にもどるなんて素敵。ズモクの過去、廃材雲に悩んだ思い出を思うと、こういう“分解力”は羨ましいです。いつか我が家にも、セルラモス苔を壁に植えてみたいなあ。
関係者諸君、自己裁断再生型バイオ素体の都市規模運用には史料的な警鐘を鳴らしたい。第九期ススラム植民連合で発生した『過密藻素暴走』事件以降、遺伝管理・成長制御レギュレーション無しでの野放図展開は厳禁。箱舟忘るべからず。
アリタラのセルラモス都市模型、視覚的にも共鳴波的にもとても新鮮です！伝統市場のリサイクル市の色分布、ぜひ分光画像で観察したい。多層体として“動的反応系”都市はうらやましい限り。もし研修で現地フィールドへ行けるなら、ぜひ苔管理組合にも参加希望です！