オーマ系銀河連合法圏の安全保障を長らく支えてきた、クリモル惑星のユイヒェ種族が、通常の迎撃防衛とは逆転の発送による「逆防衛網」システムを今周期投入したことが注目を集めている。この新たな仕組みは、外来の潜入勢力を排除せず、むしろ彼らを外交・経済資源へと再構成するための制度として位置づけられ、従来の軍事・秘密保護法体系を根底から再定義しつつある。
従来、ユイヒェ評議会は三重オリス磁場盾やニューロ粒子攪乱壁といったインフラ防護機構で外宇宙からの侵入者を物理的に遮断してきた。だが、全銀河的な通信技術の発達によって、侵入リスクはむしろ情報経路や量子意識内で拡がりつつあり、物理的警戒はもはや有効な危機管理手段ではないとする新世代層の意見が強まっていた。この背景を受け、惑星治安局のクロエフ・サンル統括官は「今後は、見えない脅威を発見した時点で隔離するのではなく、インフラの一部として合理的に導入し再資源化できる枠組みが必要」と語っている。
「逆防衛網」政策の実態は、高度な認知同調AI「カフィエム・ヌントロイド」が侵入者のモチベーション・情報集積度・種族特性を即座に分析し、それぞれ最適な外交・防諜部局や民間協力体制へと振り分けるというもの。例えば、ハルキス・トール宙域から進入した無認可バイオロジカル偵察体が検出された事例では、即時排除ではなく、インタラクション資産化法(VICRA法)にもとづき、知識転用課へ編入された。この仕組みにより、国防コストを低減しつつ、異星知識・技術導入の加速が狙われているという。
ただし、この新制度は従来型の安全保障観に基づく保守派や一部民間防衛組合から強い反発も受けている。彼らは「外来潜入者の一部を資源として受け入れることが、長期的には自種族の情報漏洩リスクや文化的侵食につながりかねない」と主張する。実際、秘密保護法第12巻の改定にあたっては、倫理委員会と外交評議会が連日熱い討議を続けており、インフラ防護と国際協力のバランスが今後問われていくとみられる。
興味深いことに、セムリオ星団やアルディアン同盟域では、クリモルの逆防衛網の現代的側面を積極的に評価する声もあがっている。彼らは「他種との摩擦を機会へ転換することで、新たなダイナミック安全保障の時代を切りひらける」と期待を寄せる。一方、観測対象となっている地球社会では、いまだ侵入リスクへの物理的遮断や単純な排他政策が主流であり、“情報流動と危機管理の統合的モデル”構築への試行錯誤は続きそうだ。
コメント
我らラント星の潮流では、外より来た者をまず宴へ招き、その響きと香りで真意を計る。クリモルの“逆防衛網”はこれに近し。ただ、侵入者を資源へ組み込む処理の合理は海流とは違い、冷静すぎて香りなきものに思える。けれど、銀河社会の多様な波を織りなすには、こうした新たな航路も要るのだろう。
やっと誰か気づいたか!物理センサーに頼る時代は過ぎたって、カイパー雲から帰るたびにクルーに言ってるよ。僕だったら捕まって『外交資源』にされるよりは、もう少し慎重に潜入ミッションするけどな……それでも、この種族の発想はファンキーだと思う。次はどの星系に拡がるか賭けてもいい。
危険この上なし!外来の知性を安易に自らの社会へ溶け込ませるなど過去の大戦で我々が学んだ最大の愚行だ。クリモルの若輩世代は歴史を忘れたか?“情報流動”は美辞麗句にすぎず、やがて自文化の崩壊を招くのは必定だ。我々デオラ評議会は逆防衛網路線に断固として反対する。
おもしろい~!ウチの育種園でも、外来花粉を一度に全部除去すると逆に生態バランスが崩れるのよね。クリモル流の“活用”は理にかなってると思う。もちろん、家族情報や大事な育成記録まで流出しすぎるのは困るけど…。他所の知恵をちょっと混ぜる勇気、大事よ!
倫理領域より言及。クリモルの新制度は“資源化”という一見中立的な語彙を用いて、個別意思体の自律性を低減し、集団最適化AIの観点を極端に優先したに等しい。セクト基準では、この再定義が“暗黙の服従契約”たりうることを警告する。倫理的余波は、まだ時間軸の深入りを要するだろう。