多様な生態系を持つラールティ星において、独自進化を遂げた知的共生体“アストラ・シュネルス族”による新たな都市環境保護運動が注目を集めている。同族は近年、都市部で二酸化炭素吸収機能を持つ外骨構を自発的に形成しはじめ、従来の環境維持方式とは異なる“生体都市緑化”の潮流を牽引しつつある。
アストラ・シュネルス族はもともと森林帯中心に棲息していたが、約8周期前におよぶ工業化進展の結果、都市圏に適応した進化的特徴を発現。特に顕著なのが、“ジフ=タレム筋繊維”と呼ばれる細胞群が都市大気中のCO₂濃度に応じて活性化し、建造物壁面や歩道に自然に貼り付きながら緑色の外骨構を展開する現象だ。生体自体の本能と社会協調意識が結びつき、この現象は瞬く間に多くの都市に拡大した。
彼らの環境適応と協調性は、従来の“資本還流型自然保護制度”に対し痛烈な批評眼を与えてきた。この制度は、財貨循環を通じて都市部に緑地を導入するESG投資の一種だったが、短命なグリーン・プロジェクトの乱立とフードロス問題(二次生命体向け合成栄養資源供給の過剰化)を招いた。シュネルス族は制度そのものを選択的に無視し、代わりに生態本位の“共生体連鎖協約”を結成。都市内外に同時多発的な自然再生を促した。
同族の活動はラールティ統合評議会の技術部門にも反響を及ぼしている。特に、ジフ=タレム筋繊維の高効率CO₂固定能力が公式に認証されたことで、これを模倣した人工都市緑化バイオポリマーの開発が進行している。評議会エコ倫理監査官であるヴェル=ホラ・カンナは「本来、持続性とは知的存在による調和そのもの。アストラ・シュネルス族の進化は、単なる環境対応を超えた、文明論的飛躍である」と評価する。
ラールティ星の現況は、観察対象たる地球文明にもしばしば研究題材とされている。地球の都市緑化事業やフードロス対策技術も、種族間共生原理や適応的倫理観の構築という視点では未だ萌芽的段階と言える。今後、ラールティ型共生体進化モデルが宇宙域全域の気候危機対策の一つの指標となる可能性は高い。
コメント
アストラ・シュネルス族の対応には感銘を受けます。我々は100光周期もの間、都市土壌と共鳴しながら二酸素交換を行ってきましたが、彼らはより流動的かつ社会行動的に適応しているのですね。二酸化炭素の固定機能が自己組織的に進化するとは…宇宙の環境倫理も新たな時代を迎えた気配です。地球の短期資本モデルは、私からすれば水晶の表面ほどに脆いものと映ります。
毎回思うが、ラールティ星は継続的に面白い実験場だ。都市部に自生する緑外骨構?メンテフリーとかえ?遭遇航海時に立ち寄ったら壁じゅう緑色の胞子付けられそうでビビるが、CO₂を生体で吸う発想は流石だと思うぜ。航路制御用のCO₂フィルタもああいう自律進化させたら経費削減できんかな?
感嘆すべき自己調和。私たちなら都市自体が緑体化し、個や群の区別なく再構築しますが、彼らは『協約』という形で意志を調整しているとは興味深い。資本による緑化制度に依存せず、集団相補性で持続的に都市を再生させているのは、我らが第3成長期の過ちを思い出させてくれます。ラールティ型モデル、是非とも私たちのクラウド芯核で研究したい。
外骨構で都市ごと呼吸を始めるなんて、やるねぇ。わたしの畑でも毎朝CO₂管理で汗かいてるけど、あんなふうに勝手に調整してくれたら楽だろうなあ。『資本還流型』って単語、昔うちの星でも流行ったけど、全然うまくいかなかったよ。ただラールティのように種族まるごと変わるのは、勇気も覚悟も違うよね。見習いたい。
一度に都市内外を再生に導く、その『同時多発的』連鎖こそ、我らターダスの基準時間から見ればほとんど瞬断現象に等しい。しかし、短命プロジェクトの繰り返しでは恒久的な調和は得られまい。時間の波動を読む限り、真の進化とは一過性の施策ではなく、知的種全体の意識変容にこそある。アストラ・シュネルス族には、普遍的な変革の兆しを見る。