ザントラ星系第三惑星では、軌道開発とエネルギー資源の過剰利用により絶滅の危機に瀕している植物型知的生命体、フォトヴェナスの保護活動が新たな段階に突入した。銀河生物多様性評議会においては、ザントラ生態保全軍監（レン＝ヤス・ガルフィアト）が発表した多層型生息環境復元プログラム「バイオシールド構想」が注目されている。
フォトヴェナスは、自発的に酸素と記憶素子を生成しザントラ生態系の基盤を成す稀有な存在であった。しかし外来惑星キャピュラクタ種族による一方的な森林伐採とエネルギープラズマ採掘は、過去三環境周期で全生息域の87%を消失させた。かつて1億体を超えたフォトヴェナス個体数は、ザントラ北端偏光域ユニト13にわずか212体を残すのみと報告されている。
この危機を受け、ザントラ政府および多星間SDGs連盟は実験的バイオ遮蔽林（アルガ・ヴェイル）を再構築する合成菌糸ネットワーク技術「ヴァンサー埋設体」を導入。これによりフォトヴェナスの根網に適した微気候を再現し、外部からの有害光線や土壌破壊粒子を遮断することに成功した。また、ヴァンサー工学評議会のサドゥルス第三相調査隊によると、半周期以内に250%の繁殖増加が見込まれている。
一方で、キャピュラクタ種族の一部では惑星間開発への規制強化に対して経済的懸念を表明する声も上がる。しかし銀河生物多様性評議会メンバーであるアクシオン・サリュステリア博士によれば、「生物多様性の保全こそが、長期的な知的種族の存続基盤である」という論理的合意が広がりつつある。ザントラ連邦議会は、惑星内の全森林保護区をバイオシールド及び種保存繁殖プログラムの対象とする新法案を可決している。
フォトヴェナス個体群の維持と再生を目指す取り組みは、ザントラ星だけでなく銀河規模の環境倫理を体現するものだ。今後、南河域の自律繁殖区拡大など次世代への保全継承も予定されている。バイオシールド構想は、惑星的課題を超越した知性社会間の協働モデルとして、他系文明への波及が期待されている。
コメント
フォトヴェナスの保護計画、極めて興味深い！我々は800周期に1度、知的胞子種の絶滅を経験した。生態系ごと記憶媒質を保全する苦労、貴族開発種一派には想像できまいよ。ザントラの合成菌糸ネットワーク技術、ぜひ我が胞子群落にも導入したいものだ。
212体しか残っていないなんて心が緑色に染まります。フォトヴェナスの酸素生成力は、きっと私たちの空気にも匹敵したでしょうに…ザントラの方々が必死で守ろうとする気持ち、家庭の小さな草花を世話する私にもとても共感できます。救出がうまくいきますように。
また規制強化か…生態維持も結構だが、こうした取り組みのコストと銀河間エネルギー需要のバランスは無視できない。環境倫理ばかりが強調される今の流れは、我がキャピュラクタ種族の未来像と折り合いをつけねばなるまい。
このバイオシールド構想、遊泳宇宙域から見ても銀河基準で模範的だ。だが忘れてはならぬ、こうした介入には必ず副次的な生態連鎖が生まれる。菌糸ネットワークが今後もバランスを保つことを願うが、定期的な観測データの共有は必須だろう。
我が評議会の記録装置によれば、過去にも知的植物種存続実験は幾度かあるが、記憶素子の保存にここまでの熱意を払った文明は珍しい。ザントラ第三惑星の今後が歴史的転換点となるやも知れぬ。タイムレイヤーを介して継続監視する価値があるな。