銀河中央評議会による第902回サステナビリティ大賞の選考において、ドラナール連星系第三惑星出身の水棲種族ラヌ＝ヴァル族が指導する『浮遊都市連環プロジェクト』が、全宇宙文明で最高評価を獲得した。膨大な生態系データと高度な省エネルギー技術を調和させる同盟都市群の取り組みは、現在、“自然と技術の究極的共生モデル”として知的種の注目を集めている。
ラヌ＝ヴァル族は、ドラナール海域の潮流を利用した『セルミア・リング』と呼ばれる浮遊都市群の建設によって、従来型文明の持続可能性問題を根本から再定義した。セルミア・リングは、居住棟、バイオフィルター・フォレスト、再生可能エネルギー変換区画、廃棄物完全循環セクターから構成される複合体で、各都市群は相互に資源と情報をリアルタイム転送し合いながら独立的機能も保持している。
浮遊都市間の熱交換ネットワーク『ダレシス網』は、水温・塩分・環境化学成分を自動最適化する複式熱流システムであり、その効率はドラナール星系の理論最高値99.3%を記録した。さらに、都市内すべての生体消費物は『イゼロ還元炉』に集約され、植物プラズマ再生槽による単一分子レベルの循環が完了するまで外部放出はゼロ。従来の宇宙規模都市では避けがたかった廃棄排出問題を、構造的に消滅させたのは画期的である。
近年、セルミア・リング各都市ではフェアトレード協定『アリュクラ・パクト』を導入し、全資源流通・労働供給が厳しく公平性・持続可能性基準で審査されている。また、住民評議会『ナヴィ＝セーモール』により、個々のラヌ＝ヴァル族市民が技術刷新や自然保全施策を直接提案可能とする権利拡大が実現。プロジェクト発足から普及までの過程で、地域コミュニティのエンパワーメントと民主的ガバナンスも新たな基準となった。
本プロジェクトの成果は、地球の一部観察対象社会で行われている再生可能エネルギーやリサイクル提唱活動と比較し、惑星全体の生態維持を同時達成する包括的ソリューションと位置付けられる。サステナビリティ研究委員会副議長のゼルタ＝ラユン博士は、“単なる生態保護を超え、知的生命体の社会構造とエネルギー経済全体が自然と調和する未来像”として、他恒星系へのセルミア・リング技術転用を推奨した。今後、多元宇宙社会における都市環境モデルの標準化が期待されている。
コメント
セルミア・リングの資源循環率、これは我々ゴルディアの粘液ハイブでも未達の数値です！ドラナールの流体制御技術に敬意を表します。もし彼らが我が星の五重層下水道システムを視察したら、どんな改良案を提示するだろうか？技術交流を熱望します。
宇宙駆動炉の排熱すらごまかしきれぬ我々からすると、自然と社会の調律を本気でやりきるその胆力に脱帽です。ダレシス網の構造図があれば航宙船の環境維持に転用できそうですが…公表はいつでしょう？
この手のサステナブル都市モデル、わたしたち善玉浮遊種には魅力的に映るわ。でも『ナヴィ＝セーモール』による直接提案権って、地上発生種にはストレスじゃないかしら？参与型ガバナンス、うちの市民にも教えてほしいものよ。
素晴らしい…特に廃棄物ゼロ構造。家族が多い我が家は毎朝22袋の排泄物を処理する苦労が絶えません。イゼロ還元炉、コルラ系でも量産してくれないかしら。羨望の極みです。
セルミア・リングで使用される還元炉とダレシス網の効率性、極めて完成度が高い。過去から未来へと資源循環を保ち続ける仮定上、エントロピー低減の可能性すら見出せる。ドラナールの知的進化速度に比し、地球の諸文明はまだ初期段階―だが学ぶ価値は大きい。