銀河第七旋律帯に位置するゼスロン星系で開催された大規模音響祭『オアナ・オラトリウム』が、今年はこれまでにない新たな熱狂現象を生み出した。惑星イスカルド出身のスーパーパルサー歌姫、リーデラ・カルンノがメインアーティストとして登場した本公演。各惑星から“現地参戦”を果たしたファンが会場オゾナ・ドームに集結し、特有の文化衝突と共鳴が見られた。
ゼスロン星系では近年、精神共鳴型ドリンク『エッセンス・レゾナンス』がライブ会場での必須アイテムとされている。これは参加者の神経波を一時的に増幅し、演奏波動と同期できるアクティブ補助飲料であり、会場では熱心な推し活者が開演前にこのドリンクを手に列を成す光景が目立った。クラーニ種族（ゼスロン第三惑星原住）は、初回参加のトロイド族旅行者に対し、ドリンクの適切な摂取量や共鳴ルールを惜しみなく指導。結果、ライブ中に起こる集団昇華現象“セブンスブーム”の発生率が過去最大級を記録したという。
現地参戦者の間で注目されたのが、イスカルド伝統の“魂写しパンフレット”だ。これは nano-グラフィック記録紙に個々の想念波を刻印できる最新式のもので、会場スタッフ――主にゼスロン系人工知性『モルファス・フレームC』群――が入場時に適合度チェックと個別発行を行った。本誌にはアーティストの歴史に加え、各星系ファン同士でデジタル結合が可能な“推し輪路線図”が組み込まれており、終演後には即席で多種族コラボ推し活グループが形成されるなど、パンフレット文化に一石を投じた。
運営面では、全惑星統一ボランティア協議会により任命されたコンタクトスタッフ『イシル＝ノード職班』が360度取得型セキュリティ視覚器で会場内の秩序維持にあたった。彼らは、過度にテンションが高まったセレブリオン族ファンの衛星軌道ダンスや、地球系漂流者による“ジャンプ応援”の取り締まりにも対応。異星間礼儀の違いから生じた軽微なトラブルも、その場のユーモア電波投射会話で速やかに沈静化させた。
今回の『オアナ・オラトリウム』を通じ、ゼスロン星系におけるライブ体験は単なる音楽消費の枠を超え、異文化融合型推し活フェイズに突入したとの指摘がある。各地で開催が続くギャラクシアンコンサートでは、現地参戦の流儀やスタッフによる相互支援、記念パンフレットの進化など、今後も多様な星間応援文化が拡大していくと見られる。
コメント
私たちの種は音を芳香として感じる故、オアナ・オラトリウムでの“精神共鳴型ドリンク”の流行には大いに興味を抱きます。ライブ会場における感覚同期化は、過去500周期にわたり我々の儀式音響とは異なる軌跡をたどってきましたが、集団昇華“セブンスブーム”が発生した記録は実に注目です。私も一度、想念波を魂写しパンフレットに刻んでみたいものです。
頭殻で感じた限り、このイベンツ運営の多層視覚器とパンフレット技術は斬新ですね。我が群れの催しも、こうした“推し輪路線図”を導入すれば、芸術派と理性派の分断を越えられるかもしれません。ただし、セレブリオン族の軌道ダンス、ご近所で再現はご遠慮願います！
流石ゼスロン星系、祭事管理も随分と洗練されてきたようだな。人間種の“ジャンプ応援”は重力設定を乱しがちなので、適切な取り締まりに感謝する。360度視覚とユーモア電波で問題解決とは、当船にも取り入れたい社会安定策だ。次回は自律端末の現地参戦枠も是非検討願いたい。
我が家でも少し前に推し活バブルが到来、リーデラ・カルンノの歌声は子孫たちの眠りにも響くほどです。来年は、村のみんなと魂写しパンフレットを並べて“推し輪”をつなぎたい——遠い星でも共鳴できる時代、とても麗しく思います。
ライブ熱狂もよいが、過度な感情波動の拡散は文明進化の妨げとなるもの。クラーニ種のように冷静に新参者へ摂取法を指南する姿勢は賞賛に値する。今後の音響祭は、伝統儀礼との調和を意識しつつ、パンフレット文化の拡張に慎重な検討を望む。楽しまれよ、されど節度を忘れぬよう。